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門司港生活 第2話
まだ、おいらの背がお袋の腰くらいまでしかない頃、
家の蛍光灯をつけるのも少し飛び上がらないといけなかっ
た。
その建物の硝子の扉に付いている赤くて丸いドアノブにも
手は届かず只、真っ直ぐ全身の力を込めて押し入るように
していた。
エスカレーターを駆け上がり息を切らせながらショーウイ
ンドウに並ぶ物をただ黙って見つめた。
その頃手に入れる事は叶わなかったが、穴が開くほどただ
見つめていた。
ため息でも漏らした後は決まってもうひとつ上の階に自然
と足を向けていた。
階段を上がりきった所では自分の姿を伸ばしたり縮めたり
する鏡を横目に屋上に出てこの街を見渡せる展望台に上る
事が好きだった。
左手には下関、右手にはパコダ、真下を見ると果物屋の前
で信号待ちする人達に路面電車に乗り降りする姿。
グルッとひとまわりして見上げるといつも遠くから見える
シンボルマークが大きく見えた。
やがて背も伸び遠くの街に行く事が多くなるとその建物の
横を足早に通り過ぎるようになった。
時代に飲まれ消える事もできずせつなく今もこの街の中に
いる。
おいらは、時々その建物を真っ直ぐ見ることができない時
がある。
ちゃんとしたお別れができなくて・・・
「ごめんなさい、愛してました」
word by 邂逅
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